姫神の音楽

イーハトーヴォ日高見



姫神と同じ東北出身である、宮沢賢治の世界をテーマにしたアルバム。
イーハトーヴォとは宮沢賢治の心象世界の理想郷で
故郷の岩手県がモチーフとされている。
日高見は『日本書紀』にも登場する名称で、蝦夷の地の事。

このアルバムは全体を通して音が抑えられた、静かな曲調で
パーカッションなどのリズムセクションが一切ない。
ふんわりと優しく、耳に入ってくる音はまさに
「イーハトーヴォのすきとほった風」である。

ジャケットは上下反転した木の風景をバックに、竜胆の花。

1.堅雪かんこ しみ雪しんこ

曲名は『雪渡り』より、きつねたちの描写がとても愛らしい作品。
透明できらきらとした感じが、どこか童心を擽られる曲で
こだまする笛の音が、雪の銀世界を感じさせる。

2.つり鐘草は朝の鐘を高く鳴らし

曲名は『貝の火』より。
仔うさぎのホモイがひばりを助けて貝の火を授かるが
きつねにだまされ慢心に浸り、貝の火が砕けて失明してしまうお話。
やさしく包み込むような、静かな旋律に
ベルのような音がつり鐘草の音を連想させられる。
最後のシーンに、失明したホモイをお父さんがそっと慰め
後につり鐘草が朝の鐘を高く鳴らす描写があるが
曲の雰囲気からこの部分を描いているものだと思っている。
傷ついたホモイを慰めるように、つり鐘草が鳴り響く。

3.風のマント

曲名はおそらく『風の叉三郎』と思われる。
一分ほどの幻想的なイントロの後、
三拍子にあわせて流れる笛のメロディが牧歌的で美しい。

4.鋼青の空の野原/ケンタウル祭/本当のさいわい

曲名は『銀河鉄道の夜』より。
三部作構成で11分と、まほろばに次ぐ大曲。
この曲もまた、音の一つ一つに感情の微妙な変化、繊細さを感じさせる。
原作の雰囲気同様に全体を通してどこかもの哀しげな雰囲気。
一部は静寂の中に流れるピアノが始まりの予兆を感じさせ
二部はクワイアのような音が神聖。
三部は再びピアノのメロディが流れてくる。
最後の風を切るような音はまさに銀河鉄道の中、心象の世界に
引き込まれてゆく感覚になる。

5.つめ草の明かり/あのイーハトーヴォのすきとほった風

曲名は『ポラーノの広場』より。
理想郷「イーハトーヴォ」を描いた、穏やかな曲。
ストリングスをバックに、ふんわりとした笛の旋律が
素朴で牧歌的な雰囲気。
この心地よさは、イーハトーヴォのすきとほった風を
感じているかのようだ。

6.三十年という黄色な昔

曲名は『北守将軍と三人兄弟の医者』より。
最初は三拍子の行進曲のようでどことなく楽しい感じ。
後半はゆったりとした穏やかな感じになる。

7.沼ばたけのオリザ

曲名は『グスコーブドリの伝記』より。
つかみどころのない旋律と終始流れるストリングスから
どこか寒々とした印象を受ける。
黄金の稲というよりは、北風の冷たさ。

8.大空の滝/くろもじの木の匂い/雪は青白く明るく水は燐光をあげ

曲名は『なめとこ山の熊』より。
この曲もまた、全体を通して物哀しげな雰囲気を漂わせている。
第一部はイントロの旋律が冷たい印象
第二部は哀しいメロディーが流れてくる。
一瞬のピアノと静寂の後、第三部へ。
最後の口笛風メロディの盛り上がりが良い。

9.青いくるみ

曲名は『風の叉三郎』より。
アルバム中でもメロディがはっきりしているといえる。
ほっとする暖かい旋律の裏にどこか物哀しさを感じる。

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