姫神の音楽

海道



NHK総合テレビで放送された 「ぐるっと海道三万キロ」の
サウンドトラック。
昭和60年から3年間続いた紀行スタイルのドキュメンタリー番組で
海の恵みを受けて生きてきた日本人の暮らしや風土、
時代変化を記録したシリーズ。
この番組により、地方出身の音楽家だった姫神の名は
全国的に知られるようになった。

まほろばに続くニューエイジ路線となる本アルバムは
土着的な雰囲気を漂わせており、日本の風土を紹介する番組全体と雰囲気と相まって素晴らしい完成度であると言える。
(僕自身まだ産まれてすらいない時代なので番組を見たことはないが…)

ジャケットは夕日に海辺の情景。
墨の跡のようなものが全体に散らばっており、独特な雰囲気を放っている。

1.海道を行く (part Ⅰ)

番組のメインテーマ。
波の音から始まり、雄大で温かみのある旋律が流れる
とても親しみやすい曲。
海がテーマの曲ではあるが、星自身は海そのものではなく
海を渡る風をイメージしたという話もあるようだ。

2.砂の鏡

温かみの中に少し侘しさを感じさせる旋律。
日の光を浴びて輝く砂の情景が浮かぶ。
海が見せるさりげない表情を美しく描いている。

3.貝の光

透明で哀しくも美しい旋律…。
夕陽を浴びてきらめく海岸の情景を思わせる。
終始ながれるアルペシオも秀逸で
波の音から静に始まり、徐々に盛り上げてきて静に終わる。
この一瞬の情景を音に紡ぐ姫神の感性は本当に素晴らしいものである。

4.明けもどろ

土着的な香りのする、低音の繰り返しフレーズが印象的。
リズムパートも聞いていてどこか落ち着く。
素朴ながらも懐かしさを感じる一曲。

5.与那国 (ハイ・ドナン)

ハイ・ドナンとは南与那国島の事。
ガムラン風の曲で短いながらも非常に印象に残るトラック。
この曲はパーカッションが完全に主役になっているように感じる。

6.綿津見に寄せて

大らかな海を表現したような曲。
二つの旋律の描け合いが実に心地よく
海の恵みを受けて生きている日本人の想いを描いているかのようだ。

7.青、深く

どこまでも深く、神秘的な深海の情景が浮かぶ。
未知の領域に踏み込むようなおどろおどろしさを感じさせる。

8.夕凪の賦

日本の海の情景を全身で感じることのできる素晴らしい名曲。
力強くも儚く、詠うように響く旋律はとてもおおらかで美しく
まるでシンセサイザーの音に魂が宿っているかのようである。
間奏部分、静寂の中に響く竹の音色が侘び寂びを見事に表現している。
こういう曲は日本人でないと書けないだろうと思う。

9.流氷

この曲も「明けもどろ」と同じく、繰り返しのフレーズが流れる曲。
流氷のきしむ音が使われている。

10.海道を行く (part Ⅱ)

こちらのパートも秀逸で、partⅠと比べると穏やかな印象。
海鳥の切ない声が響き、旅の終わりを飾るに相応しい一曲。

11.群星

93年に再販されたCD版限定のボーナストラック。
元々は「海道を行く」のシングル版に収録されたものだが
番組とは無関係に作られたものらしい。
そのためか、アルバム全体からみるとかなり浮いている。
曲自体は少々実験的でポップながらも音の雰囲気がいかにも
当時という感じ、パーカッションも楽しげ。

コピーライト