姫神の音楽

姫神伝説



姫神せんせいしょん時代最後の作品。
日本の風土をより深く掘り下げて焦点を宛てたようなアルバムで
「服わぬ民」と呼ばれたエゾ・エミシや
九州の先住民、ハヤトなどを題材にしており
歴史上の敗者の足跡を辿る事で忘れられた「日本」を表現している。

このアルバム全体に感じられるのは、決して派手なものではないけれど
そこには日本の土に根づいて力強く生きている
儚く美しい様が感じられる。

ジャケットは水晶がはじけて太鼓が飛び出すイラスト。
皮面には龍の姿が描かれている。
裏にはよく見ると彼岸花と思われるものがひっそりと咲いている。

1.鳥のごとく

原曲は「岩手讃歌」。
色華やかな前作「舞鳥」に比べて、こちらは落ち着いていて儚い曲調。
決して派手さはないけれど、そこには
北天を翔ける鳥のように、力強く羽ばたいて生きていく民の姿…
そんなイメージを感じさせてくれる。

2.うたげ

「貝神楽」をよりポップにしたような雰囲気。
主旋律と裏打ちのリズムとの掛け合いがノリが良く
聴いていて心地がよい。
中盤ではギターソロが前面に出ている。

3.遠い日・風はあおあお

初期の姫神を代表する名曲中の名曲。
どこまでも青く清々しく広がる空…
東北風土への限りない愛を感じさせる。
日本の在りし日の風景、そういうものがこの曲の中にあるように思える。
終始テンポよく使われている鼓の音(実はポリバケツという噂も)が
とても効果的。
当時を知る姫神ファンの多くはこの曲を好んでおり
星吉昭自身も特にお気に入りと語っていたそうである。
曲名も姫神らしい単語(遠い・風・青)が全て含まれている。

4.桐の花むらさきに燃え

うねりのあるサイケデリックなシンセ音が特徴的。
力強く儚くこぶしのまわった旋律で、終盤に加わる
副旋律も良い味を出している。
曲名のつけかたも日本的でカッコ良い。

5.山神祭

岩手県花巻市の民俗芸能「早池峰神楽」が元になっている。
えんぶりに比べて落ち着いており、より土着的な響きがする。
終始シンセの笛と和太鼓によるフレーズの繰り返しだが
微妙に変化していく展開が素朴ながらも味わい深い曲。

6.十三の砂山

星吉昭が東北の英雄の足跡をたどり、津軽を訪れたときに
生まれたという曲。
青森の十三湖に同名の民謡があるがこちらとは別物のようだ。
波の間から流れる旋律が、英雄の影で苦しむ
女達の悲しみを感じさせる。
この曲は、後に「東日流」でリメイクされている。

7.ハヤト

曲名は九州の先住民「隼人」からきている。
重厚かつ壮大な曲で、ベースやドラムなどをほとんど伴わず
深みのあるシンセサイザーの音色で表現されている。
中盤の旋律が美しくとても物悲しい。
大和朝廷に滅ぼされ、歴史からその姿を抹消された
ハヤトへの鎮魂歌といった趣。

因みに、この「ハヤト」という名称、実は僕自身と
繋がりが深いものなので
姫神がこの曲を題材にした事には不思議な境遇を覚えたものである。

8.北天の星

「まほろば」に通じる、透明感のある壮大な曲。
星の輝きを思わせる、アルペシオの音色がとても心地よい。
北天の星たちに想いを寄せる先人の姿が浮かぶ。
先代はどのような想いでこの曲を描いたのだろうか…。

9.雪女

姫神せんせいしょん最後を飾ることとなった曲。
「河童淵」に通じる軽快で楽しげなテクノポップ調…なのだが
旋律の節回しや、所々に吹く風の音にどこか哀しさが合間見えてくる。
雪女の哀しみを表してるかのような吹雪の音が響きわたり
特に終盤の転調部分は心打たれる。
言葉では語りつくせない、東北の奥深さを感じる。

姫神とせんせいしょんが融合した、独自のみちのく音世界…
このような素晴らしい曲の数々はもう、後にも先にもないだろう。

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